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『表具文化から探る日本のしきたりと和の心』-第Ⅲ.和漢の章(その19)

>>未分類
広葉樹
 こうした針葉樹に対し、国産広葉樹は、欅(ケヤキ)など寺家唐様で用いる一部の材を除き日本で建築材として伝統的に好まれません。
 これは植林が檜や杉の針葉樹が中心で、広葉樹の山が雑木林と呼ばれてきたことからもわかります。

 たとえば楢(ナラ=水楢)は英語ではオークであり、西欧では最高の木材とされるものです。
 この楢(落葉樹)は明治時代に辞書をつくった日本の翻訳者によって樫(カシ=常緑樹)と誤訳されましたが、これは西洋の銘木があの雑木、楢であるはずがないという思い込みによるものといわれます。

この楢は明治の末期にその価値が認められ、その後ジャパニーズ・オークとして世界的な名声を馳せています。

 さらにまた、山毛欅(ブナ=落葉樹)にいたっては木偏に無(橅)と表記することがあるように、木のうちにも入らないとされてきました。

 なお、マツはマツキともいいますが、ブナやナラはブナキやナラキなどとは呼びません。

 ところで、ブナ科の柏は楢と同様の変遷を経て、後にジャパニーズ・エンペラー・オークとかダイミョウ・オークと呼ばれ、やはり今日では評価の高い材となっています。

 禅語に「松柏千年寿」という句がありますが、このときの「柏」はヒノキ科の常緑針葉樹である真柏(マガシワ)、別名、槇柏(シンパク)をさします。
 つまり、中国語での柏はこの針葉樹のことであり、日本では万葉の時代から柏はブナ科の広葉樹をさします。

 なお、松、真柏、欅などを盆栽にしたものは「真の盆栽」と呼ばれます。この盆栽は中国で唐代に行われていた「盆景」が平安時代に日本へ入ってきたものに由来します。

 盆景は、扇子や屏風を考案したように日本人のコンパクト化志向に見合ったのか、やがて日本独自の文化として進化を遂げます。
 江戸時代には「盆栽」と呼ばれるようになり、近今はBONSAIと表記され世界中で高い評価を得ています。

 ところで、扇子は8世紀頃の、団扇を元にした日本の発明です。以降、日本では儀礼や贈答で多用され、中国へは北宋代に輸出が始まり、西洋でも中国を経由して流行したといいます。

この扇子のプロトタイプが檜扇(ヒオウギ)とされ、これは檜材素木の薄板を重ね繋いで扇子にしたものです。
 そして、後に和紙を貼った紙扇が生まれます。

 かつて扇には神霊が宿るものとされていました。檜扇には房飾りがなされることも、また用材に檜が使われたことも、その証でしょう。

 扇の歴史的仮名遣は「あふぎ」であり、扇は風を送ることによって「神霊をあふぎ(仰ぎ・扇ぎ)寄せる」ものとも考えられていました。
 また、これを所持しているだけで災難除けになるともいわれています。

 しかも扇子を開いた形、扇形を「八」の字に見立て「末広がり」に通ずるので縁起のよいものとしてきました。

 こうしたことからか、当時の紙の高価さもあいまって、扇子はめでたい席での引出物として、あるいは格の高い贈答品として使用されてきた歴史があります。

 しかし、中国、特に商家では扇子を贈り物に使わないそうです。それは、扇子の「扇」の字の発音が、多くの地域で「散る、散じる」という意味の「散」の発音と一致するところからといいます。
 その結果、中国では逆に「末すぼまり」として嫌われるそうです。

 なお、この扇子を開いた角度は中心角120度前後のものが主流であり、これは先述の和様タイプ菱形の内角(鈍角)と等しくなります。

素木
 いずれにしても日本人は素木(白木)を好んできました。

 たとえば床柱に限らず座敷で用いる柱や長押などの造作材も素木のまま使用します。また、外装材へも基本的に塗装を行いません。

 これに対し、唐様、たとえば寺院本堂の造作材には黒漆を塗ったり、あるいは場合によって金箔で加飾することもあります。

 素木を愛でることは中華文明だけでなく西洋キリスト教文明といった他文明にも見られない日本文明独自の性向です。

 たとえば欧州や米国では、もちろん強化や腐食防止が主目的なのでしょうが、木部の塀や外壁、あるいは内壁へもペンキなどで塗装し、安普請でも木材を素木のまま使用することがあまりありません。

 以上のことから、和様では自然をそのまま受け入れ、素のままの飾り気のない装飾を好むのに対し、唐様では自然に対抗、あるいは制覇しようとする姿勢が顕著で、素材をそのまま使うことに抵抗を覚える性向がある、といえるでしょう。

 ちなみに、針葉樹は一般に目が通り、見方によれば面白くない材ですが、素木における木理の美しさは広葉樹材と比較になりません。

 たとえば広葉樹材素木の木肌の平均光線反射率は、針葉樹材のそれと比較すると一般に半分ぐらいの値です。
こうしたこともあり広葉樹材は多く色付けして使用することが通例です。

 日本人の精神の深層には針葉樹の素木を好んできたように、あっさり、すっきりとしたもの、あるいはこうした心持ちを強く好む傾向があるようです。

 ただ、広葉樹材は針葉樹材に対して木目が強く現れ、見た目には変化に富む材です。日本人は、こうした広葉樹材の木目までも加飾とみなして敬遠してきたのでしょうか。
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2011年07月02日(Sat)
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