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『表具文化から探る日本のしきたりと和の心』-第Ⅲ.和漢の章(その8)

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シンメトリーとアシンメトリー
 唐様と和様の違いは、嗜好する造形の対称性にも現れます。

 中国風の幾何学的構図というのは左右対称で向き合うものです。
たとえば筑波大学名誉教授、三井秀樹氏は『美のジャポニズム』で「江戸時代の着物のデザイン、小袖や打掛けに左右対称の模様や図柄の構図を捜してみたが一部の羽織・半纏を除き、皆無に近かった。中国や朝鮮を含め西洋の衣装はこれとは逆に、ほとんどがシンメトリーの構図をとっている」と記しています。

 このように唐様ではシンメトリー、すなわち左右が均等な線対称の造形が好まれます。 
逆に、和様のデザインはアシンメトリーを好むのが特徴です。アシンメトリーとは左右が不均衡のことをいいます。

 このような嗜好は建築にも現れます。寺院など唐様建造物はシンメトリーに計画されるのに対し、桂離宮といった和様の建造物はアシンメトリーな造形の中に美が見出されてきました。

 また、先述した仮名書の「散らし書き」においても然りです。「散らし書き」では行間の幅を一定させず、隣接する行を多く次第に低い位置から書き出します。
そして、ある時点で余白を設け、また行の頭を高くします。
しかも、その行自体を画面に対し垂直に表現するものもあれば、時に斜めで書くものもあります。

これに対し、中国の漢字書は行の天地をなるべく揃え、すべて垂直に書くのがルールです。

 仮名書は連綿と続くように、しかも文字の大きさを変えてバランスを考慮しながら作品化されます。
中国の書作品には、こうした表現は一切見られませんが、日本の漢字書作品には文字が次の文字を引き起こすように続く、また文字の大きさが幾分変化するようなものもあります。

 こうした作品を和様書と呼んでおり、逆に中国書に見られるような謹厳なスタイルを唐様書と呼んでいます。

つまり、書作品においても唐様書と、仮名書を含めた和様書は対称、非対称の相違によって区別されています。
ちなみに、漢字唐様書を[真の真]、漢字和様書は[真の行]と規定することができます。

 好みの相違は三井氏が例に挙げているように、特に模様や文様の選定に強く現れます。

 日本独自の代表的な装飾文様は「秋草」といわれます。秋草図や秋草文は、文化の和風化が進んだ平安中期以降に多く見られるようになります。

 美術史家の源豊宗は『日本美術の流れ』で、美術を象徴するものとして西洋のヴィーナス、中国の龍に対し、日本には秋草をあてることができる、といいます。

 そして、日本芸術の本質は装飾的精神にあり、その装飾性とは単なる視覚的フォルムの問題ではなく、その背後に抒情的なものをもっている点だともいっています。
つまり、和様の美術はその抒情性に特徴があります。

 これに対し、シンメトリーな造形は一般に権威性や格式高さ、また謹厳なイメージを鑑賞者に与えます。

 なお、秋は五行説では陰。秋草で代表されるように、和様が秋を好んだ背景にはモノノアワレといった感傷もさることながら、自らの立場を陰としたところにあるのかもしれません。

 太白星は金星の異称です。ここから中国では秋の神を太白と称し、太白神は兵事や凶事を司るとされました。
ですから、中国では白が時代を通じて凶事の色とされてきたように、秋もまた唐様でさほど好まれる対象ではありません。

 さて、秋草の具体的なモチーフは主に「秋の七草」であり、これらを図案化、文様化したものは、すべてアシンメトリーに表現されます。

 また、こうした秋草と同じ系列に「吹寄せ」があります。吹寄せとは、落葉や落花などが地面に吹き集められた様子を図案化したものです。

 たとえば紅葉を始めとして銀杏の葉や松葉、松毬などを吹き寄せて秋風が運ぶ晩秋の風情を表したものや、桜や菊などを混じえて季節にこだわらず自由に表現されたものもあります。そして、こちらもアシンメトリーに表現されることが普通です。

 こうしたアシンメトリーな図案を、たとえば着物で表現するには手描きによる染めが向いています。これに対し、シンメトリーな図案を具体化するには織が適しています。
 和装における帯と着物の関係は、帯が着物に対して格上です。そして、帯には織、着物には染めを選ぶことが正装とされています。

これも見方によっては唐様-和様の対比で捉えることが可能でしょう。あるいは、陰陽和合の一つの事例とも考えることができます。

 なお、先述の唐紙の図案においても、シンメトリーな図柄によるものは〔行の真(唐様)〕、アシンメトリーなものは〔行の行(和様)〕で用いるというのが表具師の口伝です。
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2011年06月21日(Tue)
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