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『表具文化から探る日本のしきたりと和の心』-第Ⅱ.紅白の章(その18)

>>未分類
麻の葉文
 これまでに述べてきた麻とは大麻(オオアサ)をさします。大麻は古代から栽培され続けた、日本人にとって重要な植物です。

 麻の葉文(麻の葉模様)はこの大麻の葉を象ったものといわれますが、実際の大麻の葉形とはかなり違っています。
麻の葉身は掌状に7片に裂けていることが普通ですが、麻の葉文は正六角形を基礎にして構成された幾何学模様が、必要箇所へ全面に充填された文様です[図-8]。

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[図-8:麻の葉文]

 そして、この麻の葉文をよく見ると、その単位形象、すなわち麻の葉紋が二等辺三角形で構成されているのがわかります[図-9]。

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[図-9:麻の葉紋]

 ちなみに、文様という語は、模様とほぼ同義で用いられますが、「模様のうちでも一定の単位形象が繰り返され、これが面全体に展開されたもの『新潮世界美術辞典』」を文様と呼ぶことが一般的です。

 また、文様は紋様とも書きますが、紋とは狭義には単位形象としての文が高度に発達し、象徴的な意味や記号的な機能を具えたエンブレムや紋章をさします。

 ここでは、その単位形象を「紋」、これが面全体にわたって展開されたものを「文」と書き分けることにします。

 さて話を戻しますが、こうした麻の葉紋などを構成する三角形を、日本人はかつて「目」と呼び、そして古より三角文(紋)を呪術性の高い魔除け文(紋)として扱ってきました。

 さらに「目」を陰陽の影日向、すなわち白ヌキとベタで表し、三角形の連続文にしたものを蛇の鱗に見立てて鱗文と呼んできました[図-10]。

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[図-10:鱗文]

 ちなみに、太極図と同様、白ヌキが陽、ベタが陰とされます。これは囲碁で用いる白黒の碁石もそうであり、尚陽の思想に照らして、白は黒に対しての優位性を持ちます。

 この鱗文を中国では古来、龍の鱗を示すものとして吉とします。

 しかし、たとえば世阿弥「恋重荷」で老庭守の怨霊が、また「道成寺」で鐘入り後の白拍子が装束とするように、鱗文は能楽や歌舞伎といった日本の古典芸能の世界では幽界や死者を寓意します。

 鱗文が陰陽の影日向、すなわち陰陽を合したスタイルで表されるのは、劇中の設定とはいえ、怨霊や死者のタタリを畏れたからでしょう。
つまり、陰陽和合をもって魔除けとなし、タタリの表出を防いだのでしょう。

 葬式の際、近親者や棺担ぎ役が三角形の紙を額(ヒタイ)へ紐で取り付ける習俗があります。また、死者に付けさせるところもあります。
これを紙烏帽子(カミエボシ)といい、三角の紙は紙半(シハン)とも呼ぶように、正方形の白い紙(または麻布)を半分に折ってつくります。

 この紙烏帽子もまた、死者のまがまがしい魄(ハク)から身を守る護符のようなものだったのでしょう。日本で描かれたかつての幽霊図も、たいていこの紙半が額に印されます。

 さて、大麻の神道的な象徴性を考えるとき、逆に麻の葉紋をなかば強引に「麻の葉」と呼んだのかもしれません。
これは麻の葉紋が六角の星形状であり「六」が神道における神数(後述)であるから、および目を持つからと考えます。

 ところで、御守りの祖形は、麻や茅を切って包んだものといわれます。
御守りとは身に付けることによって呪具としての機能を果たすものであり、麻布の、あるいは麻の葉文を有する衣服を着用することには御守りと同じ意義があったものと考えます。

 かつて生まれたばかりの赤ん坊には、麻の葉文の産着を着せることが普通でした。これは麻が真っ直ぐに、早く、しかも丈夫に育つという意味を含んでいるからといいます。

 しかし、この産着の模様に麻の葉文を多用したのは単なる意匠や縁起担ぎというだけでなく、こうした魔除けの具としての働きを期するものだったのでしょう。
経帷子(キョウカラビラ)にも、先述の桶棺をくくる布にも白麻が使われます。また、火葬後の骨灰を墓へ埋葬する際の包み布にも用いられます。

 ところで、麻の葉紋はさらに目を凝らして見ると、篭目紋と呼ぶ形に似ています[図-11]。

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[図-11:篭目紋]

 そして、篭目紋は、竹などで編まれる篭の目を象った篭目文の単位形象です[図-12]。

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[図-12:篭目文]

 この篭目紋は、ある正三角形へ、頂点を真逆にした同じ大きさの正三角形を、重なり部が正六角形となるように重ね合わせたマークです。
そして、これら正逆の三角形を、それぞれ陽と陰になぞらえ、篭目紋は陰陽和合を表すとされてきたことから、招福のシンボルとして古くから用いられてきたものです。

 この篭目紋を中国では六芒星(ロクボウセイ)といいます。
また、ユダヤ教ではこれを神聖な図形とみなしていることから、たとえばイスラエルの国旗中央にも描かれます。このとき篭目紋は「ダビデの星」とも呼ばれます。

 こちらは麻の葉紋のように対角線で分割されていませんが、やはり「目」を持ちます。そして、篭目紋は洋の東西を問わず、魔除けの機能を有しているといわれます。

 ちなみに、時代劇で見られる罪人が護送されるときの駕籠を唐丸駕籠(トウマルカゴ)といい、これは竹製の篭へ咎人を入れ担ぎ棒で吊して運ぶものです。
 この竹製の篭が篭目で編まれているのは、罪咎がケガレとされたことから、篭目にケガレ封じを期したものであったのかもしれません。
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2011年06月10日(Fri)
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