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『表具文化から探る日本のしきたりと和の心』-第Ⅱ.紅白の章(その8)

>>未分類
Ⅱ-③ 赤と白

 これまで赤と白をそれぞれに見てきましたが、それでは水引のように赤と白がセットになったときには、どのような機能を持つのでしょう。

菅原道真公の表具
 菅原道真公などの御霊神を描いた作品の軸装(掛軸の体裁にすること)では、伝統的に赤地の織物を作品周りへ取り囲むように計画することがあります。
そして、この場合、さらにその周りへはシロい紙など白地のものを配するのが表具師の古い口伝です。

 菅公(菅原道真公)はご存知のように今日では学問の神様ですが、天神社で祀られる以前はタタリを為す怨霊として大いに畏れられた存在です。
怨霊とは受けた仕打ちに怨みをもって亡くなった位の高い人間が、死後に変化(ヘンゲ)したものとされます。

 さて、中流公家出身の菅公は、その才覚によって右大臣にまで上りつめるのですが、藤原時平によって讒訴され、左遷された九州の太宰府で失意の内に亡くなります。
その後、京に異変が相次ぎ、これが菅公のタタリとして畏れられたといいます。

 したがって、いまだ菅公の表具を行う際に赤地の織物で取り囲むようにするのは、やはり菅公に対する畏れゆえのことでしょう。
本編でも、呼び捨てにせず「公」を付けて記しているのは同じ理由です。

 ところで、怨霊はタタリを畏れてのことか、御霊(ごりょう)と言い換えられます。日本各地にある御霊神社は菅公のような憤死を遂げた人の御霊(みたま)を鎮めるために勧請されたものです。

 そして、「悪に強ければ善にも強し」といったところでしょうか。強大な怨霊は御霊として祀れば強力な善神になると信じられてきました。こうした信仰を御霊信仰といいます。

 また、怨霊を御霊としたのは言霊ゆえのことでしょう。言霊とは日本で古来、「言の葉(言葉)」に宿っているとされる不思議な力のことです。

この言霊には発した言葉どおりの結果を現す力があると信じられてきました。たとえば結婚式で「(結婚を)重ねる」、「(縁が)切れる」といった言辞が忌まれるのは、こうした言霊思想によるものです。
つまり、言葉にもまた神が存在するというアニミズムによるものです。

 ですから、このような怨霊といった意味の良くない語を御霊という高次の語に言い換えるのは日本ではよくあることです。

 たとえばワタ(内蔵)を食すると、たちまちのうちに食中毒を起こすフグも「福」や「富久」といった吉祥意を持つ字が当てられます。
そして、こうしためでたい意を持つ言い換えられた語を嘉語といいます。

 逆に、不吉な意味を連想させる言葉を忌み言葉(忌詞)といいます。

梅干と天神様
 一つ興味深い話があります。それは「梅は食うとも核食うな、中に天神寝てござる」という諺の成り立ちです。

 これは生梅の核(種子)には毒物(青酸配糖体)があり、食することを戒める諺です。
菅公はご存知のように、京の都を去るとき「東風ふかば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」と詠んだように、梅をこよなく愛した人です。

 ちなみに、東風はコチと訓みますが、五行説による皇太子の称、「東宮」を「春宮」とも書くように、東風は春風を意味します。

 ですから、この諺は梅の実と梅を好んだ菅公(天神様)の縁を掛けたものですが、それだけでなく菅公の御霊(怨霊)によるタタリをベースにも諺化されたものでしょう。

 また、もしかすると古人は、梅干を紫蘇などで赤く染めることによって、すなわち赤がその害毒をなす、かつて天神様とも呼ばれた核を包むことによって、タタリを防ぐ役目(防毒)を果たすと考えたのかもしれません。
というのも、梅干を赤く染める妥当な理由が見当たらないからです。

 なお、梅干は日本独自の食品であり、この梅干をつくるには、まず大量のシロい塩を使って塩漬にした後、日光で晒すことが普通です。
そして、塩は梅干を赤く染めたとき、色褪せを防ぐ働きもします。つまり、これにも赤と白が強く関わります。

 ところで、梅の実はクエン酸を含むことから強い殺菌力があり、食中毒を防ぐ効果があります。
 逆に、梅の実は完熟すれば黄色になるのですが、「梅雨時分の梅の実は食べてはいけない」と昔からいわれるように、未熟な青梅を食すると中毒をおこすことがあります。

 したがって、梅干を赤で染めたのは「熟」を強調した、つまり「青梅ではないよ」というのが理由なのかもしれませんが、いずれにしても梅には荒ぶる神と同様に、御利益(防毒)とタタリ(毒物被害)といった二面性が見られます。
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2011年05月31日(Tue)
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