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『表具文化から探る日本のしきたりと和の心』-まえがき

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 表具師はただ材料を集めて組み立てるだけでなく、作品内容に沿ったこれらの組合せが要求されます。そのため表具師は、表具に用いる紙や織物といった材料が持つ物理的な性質のみならず、これらが伝統的に有してきた意味をも熟知しておく必要があります。そして、これらを配色する際の根拠も然りです。

 こうした組合せの仕方を伝統的に「取合せ」と呼んでおり、この取合せには一定のルールがあります。このルールは表具千年の歴史の中で吟味され洗練されて確立したものです。たとえば仏画なら金襴の、しかも多くは唐草文様を使って表具するといったことです。

 ところで、このルールは主に日本人の宗教観が左右してきました。つまり、取合せの根拠は、こうした宗教あるいは自然な民俗信仰から派生した日本の生活文化に根差すものが極めて多くあります。

 表具師は得意とする分野こそありますが、たいていあらゆるジャンルの和物作品を扱います。ですから、表具師は至らずとも本来、日本人が関わってきた宗教や日本の生活文化全般について通じていなければなりません。

 また、表具に限らず日本の伝統的な職業、たとえば大相撲の、また歌舞伎や日本料理の世界には、こうした守るべき和のルール、すなわち約束事が極めて多くあります。
 しかも、それらには共通する事由があり、それらは日本人が守り伝えてきたしきたりや和の心を形成する根拠とほとんど同根のものです。

 私が以前に出版いたしました『表具-和の文化的遺伝子』という書物は、表具の取合せに関するところをメインに記述したものです。これはプロ向けのハウツー本であり、執筆中には取合せのルールについて深く考える機会がありました。
そして、このハウツー本を書くには、こうしたルールが、どういった原理で形成されたのかを説明する必要がありました。
 そこで本編では、このときに得た理解について記してみたいと思います。

 かといって表具のお話しをするのではありません。ここでは私達の身近にあるしきたりがどういった根拠の元になされてきたのか、和の心の本質は何なのか、といったところを中心に、至らぬこととは思いますが、至らずまでも述べてみたいと思います。

 さて、人が社会で生きて行くにはルールとマナーが必要とされます。ですから、しきたりを知っていること、守ることというのは、その社会における一つの儀礼であるでしょう。
 また、民族固有のルールやマナーを護り伝えることは、その民族の義務であろうかとも思います。

 しかし、これが過ぎると迷信を生み、たとえば丙午生まれの女性は結婚の際に差別を受ける、また鬼門を信じることによって長いローンを組んで新築した家も不自由な間取りに甘んじる、といった謂われのない不都合が生じます。
 また、たとえば百年前に生きた人と、現在に生活する人とでは教育や、その信仰観、価値観も異なり、しきたりに順うことへ強い抵抗を覚える場合もあります。

 ですから、これらの間の線引きというか、見極めが大切であると思うのです。そして、こうした分別こそが本当の教養であるといえるでしょう。

 しきたりの由来、根拠を知るということは、この分別を養うことに通じるものだと考えています。
 本編が、このあたりのことへ少しでもお役に立てればと願っています。

 ところで、掛軸の体裁こそ遠い昔に中国大陸から伝来いたしましたが、掛軸は日本で特殊な進化を遂げ、今日では日本人の心性を象徴するものともなりました。
 さらに屏風は日本オリジナルな調度・什器であり、襖や障子といった間仕切も世界に類例がありません。
 また、和室の欄間部分に据える和額は、意外なことに江戸末期頃の創製で日本発祥のものです。

 和の心が少しなりともわからないと、こうした表具の発生に理解が及びません。すなわち、表具自体が和文化、いわば「和の文化的遺伝子」を備え伝えるものであるといって過言ではないでしょう。

 本編では表具を通して、和の心とはどういったものかも追求します。
 そして、伝統的な世界を紹介することによって、これが今日の「和ブーム」を側面から支えるものになることも願っています。
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2011年05月14日(Sat)

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