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『表具文化から探る日本のしきたりと和の心』-第Ⅱ.紅白の章(その1)

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Ⅱ.紅白の章

 この章では在来文化から慣習化したしきたりを中心に考えてみましょう。
 しきたりは多く民族の宗教観から生じます。つまり、在来文化は民族信仰に根差します。

 ところが、この日本の民族信仰にはキリスト教における聖書、イスラム教のコーランなどに相当する啓典がありません。
 ですから、いきおい生活文化の中に、隠れた信仰を求めざるをえません。

 そこで、本章では身近な習慣から、しきたりの由来について考えてゆきます。

 さて、日本人にとってお祝い事での、あるいは今はもう昔のことになるかもしれませんが、お中元やお歳暮といった贈答の習慣は欠かせないものです。
 まず、この贈答品につきものの「のし」についてお話しを始めましょう。

のし
 お祝いを贈るときなどに用いる祝儀袋や贈答品に付ける紙は、のし袋やのし紙とも呼ばれます。

 しかし、そもそも「のし」とは「熨斗」と書き、細く六角形に折った紅白の色紙(イロガミ)の中に貼り付けられている、縮んだ黄色っぽい紙のみをさします。

img03.jpg

 ただ、あの黄色い紙も本来の熨斗ではなく、それは熨斗鮑(ノシアワビ)を模したものです。アワビの身を薄く削いで干物にし、それを熨(ノ)したものが「熨斗鮑」であり、これを略した「熨斗」がその名の由来です。

 ところで、そもそも熨斗は火熨斗(ヒノシ)といい、今でいうところのアイロンをさします。つまり、「熨す」という語は火力の熱によって、ものを「伸ばす」という意味です。

 この「伸す」には「延す」とも漢字が当てられることから、熨斗が延命長寿の意を持つようになります。よって、「熨斗鮑」は「延鮑」とも書きます。

 なお、簡略化された現在の「のし」には、その形を印刷した「判熨斗」や、「のし」という字を一筆書きしただけの「文字熨斗」などいろいろな種類があります。

 今日では本物の熨斗鮑を見る機会は、結納飾りぐらい以外にほとんどありませんが、毎年熨斗鮑が供えられる伊勢神宮近くの鳥羽市国崎には、神宮司庁所管の御料鰒調整所(ゴリョウアワビチョウセイジョ)があり、今でも本来の熨斗鮑がつくられています。

 ところで、それではなぜ贈答品にこうした熨斗による飾りが用いられるようになったのでしょうか。

 古来、日本で吉事には御酒(ゴシュ)を頂くことがしきたりです。
これは神事での慣習から生まれたものであり、このとき酒とともに魚や鳥肉などの「生臭(ナマグサ)」が欠かせません。それは日本酒と生臭との相性が良かったからでしょう。

 ちなみに、これが日本の特殊な生食文化を生んだといえます。
たとえば欧米では卵を生で食べると病気にかかると信じられているように、生卵を食べる習慣があるのは世界でも珍しいとされます。

 さて、いずれにせよ贈答品に海産物を添えるという風習は古くからあり、熨斗鮑も神に捧げる供物である「進物」として、吉事には酒と一緒に添えて贈られてきました。

 時代を経るにつれ、特に江戸時代以降は祝儀の進物に熨斗をつけて先方を祝う習慣が起こり、酒肴を添えるしるしの意味で包み紙の上に付けるようになったといわれます。
このとき、六角形に折った紅白の紙で熨斗鮑の一片を包んだ「包み熨斗」が一般的であったようです。

 ちなみに、アワビへ日本で「魚偏に包む」という漢字を当てたのもこれが由来でしょう。本来、アワビは「鰒」と書きます。
そして、「鮑」はそもそも塩漬けの魚、あるいは腐った魚を意味します。

 ところで、現在、贈り物に熨斗を付ける場合はお祝い事、すなわち慶事に限ります。
そして、仏教では生臭物を断ち精進を尊ぶ事から、お葬式など弔事で用いるものに付けるのは禁物とされ、このとき熨斗鮑の替わりに昆布を用いた昆布熨斗を付けることもあります。

 逆に、仏事に関係のない贈答品には、精進でないことを示すため、生臭物の代表として熨斗を添えるようになったともいわれます。

 また、アワビ自体がそもそも生ものですから、本当は「魚介類や鳥、卵などを贈る場合には、生臭の重複を避けて熨斗を付けない」というのもルールです。
このときの進物は紅白の紙で包み、さらに紅白の水引(ミズヒキ)のみで包装するのが普通です。

 さて、熨斗は品物の無害を示すシンボルで、ケガレがないことを表すものとされてきましたが、はたして熨斗鮑にそうした効能があるのでしょうか。

 確かに古代の中国では、アワビを「不老長寿」や「延命若返り」といった薬理効果が高い食物とみなしていました。

 しかし、アワビ自体にケガレを排する力があるわけではありません。ですから、熨斗鮑ではなく紅白の包装紙と、紙を縒ってつくる水引にそうした機能があると考えるほうが自然です。
それは、他の生臭を贈るときにも紅白の紙で包み、水引をかけるからです。

 したがって、紅白にケガレを除する力、すなわちこの場合には抗腐敗作用があると考えられていたのでしょう。

 そこで、次回以降では、これを白と赤、それぞれについて考えてみたいと思います。
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2011年05月24日(Tue)
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